ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

中学生3年生の夏。


2人だけの教室。


先生に頼まれ、古典のプリントをまとめていた私と、横でそれを眺める彼。


『未琴は他人の人生を生きているみたいだ』


そう言った彼の、微かな悔しさが滲んだ表情を、今でも鮮明に思い出せる。


この人は、人のために悔しいと思ってくれるのだ。


それが少しだけ気持ちよくて、温かかった。


だからこそ、彼との約束を破り続けていることに、後ろめたさを感じずにはいられない。


変わることも変わらないこともできずに、私はずっと停滞している。


彼が今の私を知ったら、一体何と言うのだろうか。


「未琴?」


「え、あ……ぼーっとして……」


私を窺う和香ちゃんの声にハッとして、顔を上げる。


いつの間にか意識が過去に飛んでいた。


「珍しいね。いいんちょーでもそういうことあるんだ」


「あるよ普通に……今のはちょっと、間違えました」


「あはは間違い」


からからと和香ちゃんが笑い声を上げたところで、遠くから私と和香ちゃんを呼ぶ声がした。


2人振り返ると、深刻そうな顔をした篠宮くんが何やら手招きをしている。


私は和香ちゃんと顔を見合わせ、篠宮くんの方へ向かう。


篠宮くんの周りには三人衆と三神くんがいて、三神くん以外、みんな何かを企んでいるように口元を緩ませていた。