ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

「や、今はいいわ。いいんちょー見てると顔あっつい」


三神くんはそのまますい、と体の向きを変えてまた歩き出す。


けれどすぐに立ち止まって私を振り返り、困ったように「いんじゃね」と唇に乗せた。


それが機嫌とりだったのか、気まぐれだったのかは分からない。


もしかしたら、なんの意味もない、ただの言葉だったのかもしれない。


それでも、心に夏の風が吹く。


緩みそうになる口元を両手で抑え、私は三神くんの背中を追いかける。


「似合ってますか」


「そこまでは言ってない」


「似合ってませんか」


「……言わせてんでしょ、それは」


三神くんは苦い顔で、ちらりと私を見下ろした。


そして一拍置いた後、照れ隠しのようにぶっきらぼうに、


「似合ってないなら、言わない」


そう言って、笑みを零す私を置き、海の方へと歩を進めた。


振り返らないその背中の白が、妙に眩しかった。