ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

『何はともあれ、よかったね』


和香ちゃんは何が、とは言わなかった。


けれど何かを察しているような口ぶりに、私はこくり、と頭を縦に振る。


「……はい」


たぶん、和香ちゃんには全てお見通しで、それでも口を出さずに見守ってくれている。


私が自分で言うまで、私が和香ちゃんを頼るまで、何よりも私の意思を尊重してくれるのだ。


茶化したり、話のネタにしたりしない。


ただ、静かに私の心を守ってくれる。


世話焼きな和香ちゃんの、一番優しいところ。


『未琴、今日だけは全部忘れて“青春”しようね』


和香ちゃんの声が、耳元で響く。


『約束』


「……うん」


くすぐったいような指切りを、和香ちゃんと交わす。


同時に、いつかこうして友達と結んだ約束が脳裏をよぎった。


叶えられなかった約束。


破ってしまった、君との約束。


決して忘れたわけじゃない。


けれど、心がざわめくその記憶には瞳を閉じて、私は今この瞬間だけを見つめる。


それがきっと、和香ちゃんの誠実さに応えるということだから。


「……約束」


唇に乗せながら、私はひっそり、不器用なこの笑顔を誰にも見られなくてよかったと思った。