ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

返事の代わりに電話口から聞こえてきたのは、安堵の声だった。


溜息ともつかないその声に、私は目を丸くする。


『今日に限ってお姉ちゃんが私の水着持って行っててさ。もう一着あるかなって探してたんだけど、見つかんなくて。未琴が水着着ていくなら私も着ていきたいし、どうしようかなって思ってたの』


堰が切れたように話し出した和香ちゃんは、どうやら本当に頭を悩ませていたみたいだ。


まるでさっきまでの私みたい、と内心苦笑する。


「じゃあちょうど良かったですね。私もひとり泳げないと周りに気を遣わせちゃうかもって、少し心配だったから……」


『せっかくだし泳ぎたかったけどね』


電話だから和香ちゃんの顔は見えないけれど、もしその表情が窺えたらきっとすごく残念そうな顔をしているんだろう。


和香ちゃんは運動神経がいいから、選択のプールの授業でも水泳部に次いで成績がいいと風の噂で聞いたことがある。


私とは大違いだ。


『ていうか三神がいるのも三神が未琴を誘うのも意外すぎ。あいつキャラ変でもしたの?』


「そうでしょうか?三神くん、分かりにくいですけど、元々案外人懐っこいですよ。分かりにくいですけど」


『2回も言うな。しかも三神が人懐っこいとか、わりかしどうでもいい……』


和香ちゃんは心底どうでもよさそうに呟いて、それから『でも、』と話を続けた。