ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)




階段を登って自室に足を踏み入れると、私は勢いよくクローゼットのドアを開ける。


探しているのは目の前に並ぶワンピースやブラウスではなく、横に積んである収納ケース。


祈りを込めて中を確かめるけれど、目当てのものは見当たらない。


予想通りと言えば予想通りだ。


かといって諦められる程期待していなかったわけではなくて、微かな落胆が胸の内に広がる。


「水着……どうしよう……」


行く、と返事をしたのはいいものの、昔からずっとめだか教室の常連だった私に、スクール水着以外の選択肢があるはずがなかった。


すっかり忘れていたけれど、私は生まれてこの方満足に泳げたことがないのだ。


ただ三神くんに会いたい一心で返事をしてしまった。


ほとんど反射で、水着のことなんか頭にないも同然で。


準備の段階で気がついて、もしかしたらお母さんのお下がりがあったかも、と思ったけれど、もう捨ててしまっていたみたいだ。


着ることなんてもうないだろうと思っていたから。


さすがにスクール水着を持っていくわけにはいかず、私は額に手を当てる。