届かぬ指先─映《ば》えない恋の叶え方


「私も…!私も好き!!」

「マジで?」

「うん!」


人差し指でスマホの画面をスワイプする。
色とりどりの鮮やかな花たちがオランダ風の風車小屋を囲むおとぎ話のような風景と、星空が投影される前のプラネタリウムの天球に広がる薄茜の夕空に一筋の星が流れる瞬間が現れる。


「へー…綺麗だな」


彼はもう一度私のスマホに釘付けで眼を輝かせた。


元々はSNSで友達に見せるためだけに撮った写真だったのに、こんなに気に入って熱心に見てもらえるなんて。

(なんか嬉しい)


「他にもなんか撮ったのあるの?」

「まだ引っ越してきたばっかりだからそんなにはないけど、水族館のシャチのプールとか、夕凪町の洋館とか」

「あぁ良いな」

「カフェとかご当地ラーメンとかもあるけど」

「ははっ!それも好きだ」


彼が笑うたび、胸がくすぐったく高鳴る。
春なのに陽射しのせい?頬が熱い。


「大丈夫?顔赤い」

「えっ?」


気付かれて余計暑い。


「今日、結構暑いよな。ちょっと待ってな」

そう言って背負っていたリュックの左肩をはずして中を漁る。
取り出したのは県内のお茶の産地の抹茶を使った地域限定の緑茶のペットボトル。


「やるよ、それ」


手渡されたそれは少し汗をかいていてひんやりとしていた。