届かぬ指先─映《ば》えない恋の叶え方

職員室の二つ奥にある会議室で制服の箱とぱりっと真新しい教科書を受け取った。

「じゃあ始業式で待っています」

「はい、ありがとうございます」

私が頭を下げると先生は職員室に戻って行った。


「これで制服、僕らと一緒だね」

隣で男の子が微笑む。


「あっ、あの!ありがとうございました!」

「どういたしまして。困っている人は助ける。ましてや僕らの仲間になる人だからね、当然だよ」


階段を下りてふたりで玄関に戻る。

「じゃあ僕はこれで」

「ありがとうございました」


品のいい紺のスニーカーを履いて先に外に向かいかけた彼が不意に振り返る。


「なれるといいね、同じクラス」

「!」


入口から射し込む逆光に、彼の滑らかな頬から顎のラインと柔らかな色の髪の輪郭が内から輝くみたいに浮かび上がる。
眼を細めふわりと微笑む彼は思わず息を飲むくらい美しかった。


「マサムネー」

外から呼ぶ声に彼は

「今行く」

と手を挙げて応える。


「また、始業式でね。椿さん」

男の子は仲間の元に駆けていった。