届かぬ指先─映《ば》えない恋の叶え方


「へっ!?」

「うちの学校、転校生珍しいでしょう。みんな気になるみたい」


桜の木の下の一団がにかっと笑う。


「何年生?」

「に、2年です」

「僕らと一緒だね。良かったら職員室まで案内しよう。先生を呼んであげる」


男の子は後ろを振り返り、おそらく『2年生』という意味のピースサインを送ると、下駄箱からスリッパを取り出して玄関に上がった。その後について私も上がり込む。


「どこから来たの?」

「東京、です」

「そう。こっちに来てびっくりしたでしょう?ここは東京に比べて田舎だから。

あ、ここだよ職員室」


階段を上がってすぐの左手にそれはあった。


「失礼します」

男の子がドアをノックして開ける。

「転校生の…えーと」

「椿です!椿愛澄と言います。制服と教科書いただきに来ました」


彼の後からひょこっと覗き込むと、男の先生がこちらに向かってきた。


「2年の学年主任だよ」

男の子が耳打ちする。


「椿さんですね。会議室に用意してあるので一緒に取りに行きましょう」

先生について職員室を出ると、男の子も一緒に私の隣についてきてくれた。


「誰?」

「転校生かな?」

ここでもまた遠くからも注目を浴びる。
でも、そのたびに男の子が彼らににこやかに手を振った。すると急にその視線も和やかなものになるから不思議だ。