届かぬ指先─映《ば》えない恋の叶え方

翌朝。
私は小さめのセーラー襟の着慣れた制服を身に付けて、学校の門をくぐった。


(えぇと、来客用玄関、っと…)

きょろきょろしながら校内を進んでいると、すれ違う人も追い越していく人も私を振り返る。

見慣れない制服が校内をうろうろしているのが目立つんだろう。
しょうがないんだけれど、でもやっぱり人から注目されるのは苦手だ。変に緊張してしまって身を縮めるから余計に変な歩き方になって恥ずかしい。


(あ、ここかな?)


開け放された両開きのガラス扉から覗くと少し狭い土間と小さめの下駄箱が見えた。

中を見回してそっと一歩踏み入れた時、


「何かお探しですか?」

「!」


突然背中に呼び掛けられた。


「えっ!あっ、あの!職員室はっ!?」

驚いて振り返ると、そこには男の子がひとり立っていた。

男の子─制服を見れば男の子と分かるのだけど、まるで女の子、それも美少女と見紛うような綺麗な男の子だった。


「あぁ、職員室はこの玄関から入ってすぐ右の階段を上って2階ですよ」

男の子は綺麗な微笑みを浮かべて、これまた綺麗な指で指さした。


「あっ、ありがとうございます!」

男の子にぺこりとお辞儀をする。


「転校生ですか?」

「えっ」

「ごめんね、聞いてこいって言われちゃって」


男の子は笑顔のまま小首を傾げると、今度は親指で自分の後ろを指す。
その先を見ると、ちょっと離れた桜の木の下から男の子と女の子あわせて7人がこちらを見守っていた。