届かぬ指先─映《ば》えない恋の叶え方


「あ!」


そう言えば名前、聞いてない…


でもきっと…

(また逢えるよね)


彼にもらった緑茶のペットボトルをもう一度そっと頬に寄せる。
美しい鮮緑色のそれはやっぱり火照った頬に心地よかった。

私はペットボトルを太陽に向かって掲げて、カシャッと写真を撮る。
そして#Loveのタグを付けてSNSに上げた。

それからぷちっと封を切って一口、口を付ける。


(美味しい)

爽やかで、ほんのり苦くてほんのり甘い。

それはどこか若草香る春の風に微笑む君のようだと思った。

        *   *   *