「ほら、もう一人やってくるよ」
リリイが指差したのは、
黒いマントを羽織った男の人。
黒い翼を羽ばたかせ、
彼は私の前に舞い降りる。
「おい、ピーヒャラ空の上で
やるのはいいんだが、
本当にこれ大丈夫なのか」
彼は、後ろを振り向き
雲の向こうのパレード隊を
まじまじと見つめる。
「ああ、エリオット様。
大丈夫じゃないですか?
戦争仕掛けるわけじゃないし」
リリイはパレードを眺めながら、
大きなあくびを一つした。
「しっかし、空の上でパレードとは。
なかなか乙なもんだね」
「お前、自分の空想がそのまんま現実に
なってるのに、驚いたりしないのか」
「ん?私?」
エリオットは怪訝そうな顔で言う。
「そうだよ。空想の主のお前に、
俺は話しかけている」
………そう言われてみれば
不思議と何も感情が湧かない。
何故だろう。
何か、思い浮かべた空想を
誰かにスケッチに
描かれたような感覚で、
普通に考えたら異様のはずなんだけど、
変だな。何も感じない。
いや、むしろ、
このまま現実が空想に飲み込まれて
しまえばいいと思っているのかもしれない。

