あの子に惹かれたのは入学してすぐだった。

1年前。

「水の戸女子芸術大学」の立て看板を横に、緊張した面持ちの柚樹。

みつえ「ほら、ゆづちゃん笑って」

柚樹「お母さん撮るなら早く撮ってよ!恥ず
かしいから」

みつえと柚樹の両端を個性豊かなファッション、髪色の入学生が校舎へと入っていく。
柚樹とその母みつえ以外、写真を撮ってる学生はいない。
三枝はカメラのフォーカスを合わせるのに苦戦している。

乃亜「宜しければ撮りましょうか?」

みつえが振り返ると、胸まで伸びた薔薇のような赤い巻き髪の女の子が立っていた。

三枝「あら、いいんですか? どうもありがと うございます」

三枝は、乃亜にカメラを任せ小走りで柚樹の元までやってくる。

三枝「ねえ、やっぱり芸術の大学だといろんな人がいるわね。みてあの子の髪、すごく綺麗」
柚樹にそう耳打ちすると、三枝も看板の横に並ぶ。

柚樹、恥ずかしさで体温が上がっていくのを感じ俯いてしまう。

乃亜「じゃあ撮りますねー」
シャッターがきられる。
結局、顔を上げられなかった柚樹はやり場のない苛立ちを抑え込むのに必死になっていた。

乃亜「はい。これ」

柚樹が顔を上げると乃亜がカメラを持って目の前に立っている。

三枝「どうもありがとうございます」

まじまじと目の前に立つ赤髪の子