感情的になりそうな気持ちを抑えれば抑えるほどに、タイピングのスピードが速くなっていく。僕は息をするのも忘れる位に夢中になって文字を打ち続けていった。
 
彼にしてみれば、俄かに信じられないような話がいきなりわいてきたようなものだろう。
自分の作品のすべてが、僕が考えたことだというのだから。――しかし、僕が小説のストーリィを考えなくなったのと同じくして、彼は文章が何も浮かばないというスランプに陥っているのは事実。荒唐無稽なメールの内容と思っても、彼は僕のメールに返事を出さずにはいられないはずだ。メールの文末には、そうせざるを得ない僕からの提案が書かれているのだから。
 
僕から彼に出した提案はこうだった。
僕と彼の思考がシンクロしていることを理解してもらうために、停止していた『世界の果てから、呼ぶ声に』の続きのプロットをメールを送った後に書き始めるということ。
彼は小説の続きを書いてもサイトにはアップしないで、僕の次のメールを待つ。
そして、次のメールで僕は自分が考えたプロットを彼に送る。――今までの作品と同じように彼の書いた文章は、僕の考えたストーリィ展開になっている筈だ。
 
僕は一気に文章を書きあげると、僅かの迷いが生まれる隙さえ見せず、送信ボタンを押していた。