この人たち、茉莉さんのこと……。
「あの、何か用ですか?」
茉莉さんファンに絡まれたか……。
「茉莉ちゃんの彼氏奪ったんだって?」
「彼氏?」
「木崎のことだよ」
「貴也さんは茉莉さんの彼氏ではありませんし、奪ってもいません」
野上さんに聞いた話しと少し違っている。どこかで話が変わっていったのだろうな。
「まぁ、そこはどうでもいいよ。要はさ、茉莉ちゃんを悲しませないで欲しいんだよね」
真ん中にいた男性がそう言って一歩前に寄った。
私は一歩下がる。
「悲しませるもなにも、私はなにもしてません」
「木崎と付き合ってるじゃん」
それが悲しませてるっていうの?
そんなの理不尽だし言いがかりだ。
「別れろってことですか? あなたたちは茉莉さんが好きなんですよね? 茉莉さんが貴也さんと付き合っていないのは都合がいいんじゃないんですか?」
そう言うと、彼らは顔を見合せ、笑いだした。
「好きだけど、彼女は俺らのアイドルみたいなもんだから」
「そう。茉莉ちゃんの幸せが第一なんだよ」
「笑顔が可愛いんだよね~」
口々にそう言われて、「はぁ!?」と言いそうになった言葉を慌てて飲み込む。
つまり、この人たちは茉莉さんのファンということか。
「そんなこと私に言われても困ります。失礼します」
こんなのにいちいち付き合ってられない。
こっちは早く帰って夕飯の支度があるんだから。
軽く会釈して彼らから離れようとすると、「待って待って」と三人に囲まれてしまった。
「どいてください」
「嫌だね~」
小馬鹿にしたようにニヤニヤと私を見てくる。
なんなのよ、もう!
何か言い返そうとすると、私の左肩を後ろから誰かがポンッと叩いた。
「何してるの」
ハッと振り替えると、そこには野上さんがいた。
「あれ? お前ら何してるの?」
野上さんは三人の男性に声をかける。
三人は野上さんの出現にあからさまにたじろいだ。
「あ、いや、その……」
「知り合い?」
野上さんにそう聞かれて、黙って首を横に振る。
「じゃぁ、ナンパ? こんな目立つところでやるなんて度胸あるじゃん」
野上さんは鼻で笑いつつ目で周りを見渡す。
その視線につられて私も見てみると、会社から出てきた人達が通りすがりにジロシロと見ていた。
「ナンパするくらいに暇ならさ、たまには俺や木崎みたくデカイ裁判やったらどう?」
「っ……!」
バカにされたように苦笑されると、男たちは野上さんを睨み付けながらその場を去っていった。



