辛辣御曹司は偽装結婚で容赦なく愛し囲う~恋なんて忘れていたのに独占激愛されて~



「証明も何も、ずっと会っていなかったんだってば。望にでも聞いてもらえばわかります」

なんでも相談してきた望ならすぐに潔白を証明してくれるだろう。

「そうか。それで、鈴音はどうなんだ?」
「どうとは?」
「元カレの誘いに乗るのか?」

貴也さんの言葉に呆れて口があんぐりと開いてしまった。
何でそう言う話になるの? あの時の私の反応を見ていてもそんなことを思ったのだろうか?

「私が不倫するような女に見えますか?」

無意識的に怒っているような声が出たが、それを隠そうとは思わなかった。
なにより私がそんな事をすると思われたのが悲しい。

「もういいです」

そう言って貴也さんをすり抜けて部屋に入ろうとすると、手を掴まれて止められた。

「待て」

貴也さんが眉を寄せて見つめてくる。
睨んでるんじゃなく、どこか戸惑いがみられた。

手……。
掴まれたところは、陸くんと同じ場所だ。
ドクンと心臓が鳴る。貴也さんが触れる手は熱を帯びるように熱くなるのが分かった。
陸くんの時には感じなかった気持ちだ。

その感情に戸惑っていると、貴也さんは私を壁側に追いやった。
壁と貴也さんに挟まれて困惑する。隙間がなく、その近さに恥ずかしくて顔をそむけた。

「ごめん、言い過ぎたな」

貴也さんは私の頭の上から謝った。パッと顔を上げると、数センチ先に貴也さんの顔がある。
近すぎて恥ずかしいのに、目が合うと逸らす事が出来なくなった。
そんな私の頬を優しく手の甲で撫でてくる。
撫でられたところがじんわりと熱を帯びてくるようで、ドキトキと落ち着かなくなる。

「鈴音の元カレに嫉妬したみたいだ」
「嫉妬? どうして?」

貴也さんの呟きに私も自然と声が囁き声のようになってくる。

「どうして? お前が俺の恋人だからだよ」
「でもそれは偽の恋人であって……」

本物ではない。
なぜだかその一言が言葉にできなかった。自分でも詰まったのがわかる。
すると、貴也さんは小さく苦笑した。

「そうだな。じゃぁ、今、その契約をひとつ破ってもいいか?」
「え?」

その瞬間、貴也さんにキスをされた。