辛辣御曹司は偽装結婚で容赦なく愛し囲う~恋なんて忘れていたのに独占激愛されて~



昔から、結婚願望は低かった。

恋人がいなかったらそれはそれで別にたいして不便を感じなかったんだよね。
大抵のことは自分で出来るしさ。

「恋人って、必須ではなかったんだよね〜……」

まぁいつか、恋人ができたらいいなー、結婚出来たらいいなーとぼんやり思っていてこの歳だ。

気が付いたら29歳。

周りは結婚をし始め、「恋人はいないの?」「作らないの?」という軽口でさえ重く感じる年齢になってしまった。

放っといてくれよ!

本音はそこだけど……。

もしかして、私ってヤバい? 

妙に焦りを感じ始めたころには、いい男なんてみんな人のもの。
こじらせ続けた結果、誰にも選ばれない自分に自己評価は低くなる一方。

「なんなの、私……」

もちろん、理想通りの恋愛なんて出来るわけがない。
ハードルを下げて妥協しなければと腹はくくるが……。

「くくりすぎて今度はどういう人がいいのかわからなくなる始末……」

強いて言うなら、優しくてちゃんと職に就いている人……、くらいだろう。

大事でしょ? 定職に就いてるのって。

そもそも好みのタイプすらハッキリとしなくなってしまった。
「じゃぁ、理想のタイプは?」と聞かれると、逆にわからなくて言葉に詰まってしまうくらい曖昧だ。

そもそも恋愛経験値の低い私には、今更駆け引きやお付き合いの仕方などうまく出来るわけないんだよ。

いい歳をして自分に自信のない所があだになっているのはわかる。しかも、こうしてグダグダと理由をつけては行動に移せない自分にも嫌気がさしている。

「このままではいけない、自分から行動しなければ!」

ということで、まずは人を好きになることの導入編である、ときめくということを思い出すことから始めようと考えた。

え? ズレてる? いやいや!

ときめきを思い出せば、何かが変わるかもしれない。

「何かヒントを得よう!」

そう思って、最近では恋愛漫画を読んで胸がキュンとする気持ちを味わえるよう、主人公の気持ちを共感することから始めた。

「恋愛する気持ちを取り戻すのよ」

そうして恋愛漫画にキュンキュンすれば、時期にときめきを思い出し、そこから恋愛の仕方を思い出すだろう。

まるで小中学生だな。

でも、今はこの方法しか思い浮かばない。

恋愛や結婚に憧れを抱けば、恋をしたい気持ちが強くなってくるかもしれないし!

そうして、私は望と別れた後、最近お世話になっている某レンタルチェーン店に足を向けた。
そこでは本の販売のほかに、同じフロアでレンタルCDやDVD、漫画のレンタルをしている。

週末は借りた漫画でも読んで心のリハビリをしよう。
そういえば、先月出た映画のDVDも借りて帰ろうかな。