辛辣御曹司は偽装結婚で容赦なく愛し囲う~恋なんて忘れていたのに独占激愛されて~



いや、当たり前のことなのだけど。

そういうことからは「元からお前は対象外だ」と言われたようで、なんだかそういった考えを浮かべた自分が恥ずかしい。

しかし……。

本当にそういった体の関係を求められていないなら、なおさら何故と疑問が浮かぶ。

木崎弁護士が、ときめきの練習台?
ただ私をキュンとさせるだけの練習台になるというの?

なんで?

改めてじっと相手を観察してしまう。

高学歴に高身長、高収入になによりイケメン。
そこら辺の俳優より素敵な容姿はしている。加えて弁護士。超ハイスペックで申し分はない。

ないのだが……、ただなにぶん性格がいけ好かない。

会社では爽やかそうな笑顔を見せているようだが、こうして話している時の腹黒そうな笑顔が本性だろうな。話し方だって、どちらかというと俺様だ。

「ときめきって必要?」とか「くだらない」とか言ってしまう相手に私の気持ちがわかるの?

どうせ、馬鹿にされているだけで、ただからかわれているだけでしょう。
本当は親しくなったら体の関係を求めてくるんじゃない?

胡散臭い……。
いや、そもそもこの人が漫画のようなときめく仕草が出来るの?

「うーん……」

様々な葛藤が頭のなかで繰り広げられていたが、そうだと閃いた。

「では、木崎先生が本当にときめくような仕草が出来るのかやって見せてください」
「ここで?」
「ここで」

そう言ってふふんと笑うと、木崎弁護士は少し思案顔をする。

自慢じゃないが、恋愛偏差値の低い私には変にテクニックを使われても通用しない。ベタなものでないとわからないんだから。

……いい歳をしてそれもどうかと思うが。

「胡散臭いのはだめですよ。出ないですか? じゃぁ出来ないということで」

思案顔のまま固まる木崎弁護士にそう告げて立ち上がろうとした時、グイッと手首を掴まれる。そしてよろけた私に顔を近づけた。

「なっ……」
「髪に糸屑ついているぞ」

耳元でそう甘い声で囁き、私の髪に大きな手でフワッと触れた。
木崎弁護士の顔を見ると、至近距離で私の目を見たまま優しい顔でニッコリとほほ笑む。

数秒間、そらされることはない視線。
しかも、甘く熱い視線だ。

「……」

触れられた髪を抑え、元の椅子にストンと座る。

これは……。