とうとうこのキスに夢中になって、
酸欠になりそうになった頃、
ガシャンと机と椅子がこすれる音と共に
達也は教室から出て行った。
「…っはぁ、はぁ。」
それからすぐ離れた唇に寂しさを覚えながら
思いっきり酸素を肺に取り込んだ。
「高嶺の結愛様がこんなんでへばってんの?」
一方広斗は余裕顔を崩していなくて、
楽しそうに、かつちょっと嫌味っぽくそう言った。
「…なんで、怒ってるの…。」
とは聞いてみたものの理由は分かってる。
本当に私のことを好きでいてくれてるなら
達也に抱きしめられたことに
いい顔はしないもんね…。
「…ごめん、抱きしめられて。」
ムスっとした表情に変わった広斗に
素直に謝るとまた機嫌の悪そうな声が
頭の上から聞こえてきた。



