そんな広斗が
毎日こうやって私と登校しているのは
広斗が言ってた”颯人君に頼まれたから”
が理由。
颯人君とは私のパパの事で
朝の出来事の通り
私を溺愛しすぎて
登下校中に危ない目に遭わない為に
広斗に私の送り迎えを命じたのだ。
ま、帰りは
友達と遊んだりで一緒に歩くのは
朝だけなんだけど。
だから、例え広斗が
嫌々でも私を待っててくれて
一緒に歩くこの朝の時間が
何よりも大切なのに
私はまた素直になれないせいで
この時間をぶち壊してしまった。
「…はぁ。」
漏らしたため息が
5月のまだ少し冷たい空気の中に溶けた。
「あーーー。」
目を閉じて上を向いていると
「冷たっ!」
急に頬に感じた何か。



