玄関から応接間に場所を移しひと心地つくと、雫ちゃんはやっと重い口を開いた。

「改装工事が終わっていない?」

「そうなの。今朝のことなんだけど、月子さんに使ってもらう予定だったゲストルームで水漏れが起きて……。改装したばかりなのに全部ぐちゃぐちゃになっちゃった……」

雫ちゃんはああっと顔を手のひらで覆い、不運を嘆くようにため息をついてみせた。

「調べてもらったら配管をいくつか取り換えなきゃいけないみたいで、残念だけど当分使えそうにないわ」

藤堂家の屋敷は主屋が西と東で分かれており、西側を伊織さんのお父様とお母様、東側を雫ちゃんと伊織さんが使用していた。

今回、私は結婚式を挙げるまで東側の件のゲストルームに滞在することになっていたのだが……どうやら無理そうだ。

「他のゲストルームは?」

「業者の人が言うには、他のゲストルームも念のため一度配管を調べた方がいいってことで、急遽、全部点検する予定になったの」

つまり、使用できるゲストルームはひとつもないということである。