「あああああああああああっ!!」

私は衝撃のあまり絶叫した。

「どうしたの!?」

水と思しきペットボトルとオードブルを盛ったお皿がのせたトレイを運んできた伊織さんが、叫び声を聞きつけて小走りでやってくる。

「や、あ、の……」

い、言えない!!

バルコニーから靴を落としましたなんて言えない!!

そんなのばれたら恥ずかしくって死ぬ!!

何があったかと追及してくる伊織さんから脇見してバルコニーから階下を覗き込むと、植え込みにハイヒールが引っかかっているのがバッチリ見えた。

(ど、どど、どうしよう……!!)

よしんば靴を落としたことを誤魔化せたとしても、片足しか靴を履いてないことをどうやって隠すのか。

……万事休すである。

「月子ちゃん?具合でも悪いの?」

顔面蒼白になっているのを体調不良とみたのか、伊織さんが心配そうに私の額を撫でてくる。

ああ、神様。お願いですから伊織さんにばれずにやり過ごせますように!!

一生懸命神様に祈ったが、こんな時だけ助けてくれる都合の良い神様などこの世にいないようだ。