私は椅子をバルコニーにえんやこらと運び、そのまま腰掛けると、裸足のままぶらぶらと脚を揺らした。
南城家の屋敷を裸足で駆け回っていたころが懐かしくなる。
子供のころは外で遊ぶのが大好きなお転婆娘だった私が、今では正反対のつんと澄ました顔でハイヒールの踵を踏み鳴らしているなんて不思議だ。
我ながらお行儀が悪いと思いながらも足で風を切り、在りし日の光景に浸っていると思いも寄らぬ出来事が起こる。
(あっ!!)
床に揃えておいたハイヒールが片方ポーンとバルコニーの手すりを超え飛んで行ってしまったのだ。
……気づいた時にはもう遅かった。



