(あっ……!!)
婚約パーティーが開始してから2時間ほどが経ち、招待客の列がひと段落すると、疲れが急にどっと押し寄せてきて足がもつれそうになる。
とっさに伊織さんの肩に捕まり事なきを得たのを、彼が見逃すはずなかった。
「大丈夫?」
「ええ……」
「少し休憩しない?ちょうど挨拶も途切れたし」
「でも……」
主役がパーティーを抜けるなんて皆困らないかとためらっているうちに、伊織さんが手招きしてうちのお兄ちゃんを呼んだ。
「少し抜ける。あとは頼むな」
お兄ちゃんは何も言わず、さっさと行けとばかりにシッシと私達を追い払ったのだった。
伊織さんが連れてきてくれたのは、藤堂家に数多あるゲストルームの一室だった。
「ここなら誰も来ないから、ゆっくり休めるよ」
「ありがとうございます」
「食べ物と飲み物を持ってくるから待ってて」
伊織さんは私を椅子に座らせると、慌ただしくゲストルームから出て行ってしまった。



