相思相愛ですがなにか?


「婚約おめでとうございます」

「ありがとうございます」

最初の挨拶こそ想定外だったが、その後は何事もなく婚約パーティーは進んでいった。

私と伊織さんのもとには、ひっきりなしに招待客がやって来て途切れることがなかった。

お兄ちゃんから渡された資料を入念に読み込んだおかげで、初対面でもそれなりに話題を提供することが出来て大いに助かった。

(伊織さん、すごいな……)

私は隣で初老の男性と談笑している伊織さんを尊敬の眼差しで見つめた。

伊織さんは招待客全員の名前はおろか、家族構成や趣味まで把握しており時折軽快なジョークまで挟んで話を盛り上げている。

モデルのお仕事をお休みしている私と違って、毎日朝から晩までお仕事で忙しそうにしているのに、一体いつ覚えたのだろうか。

時間もかかるし大変だったろうに、そんなことをおくびにも出さず、サラリとやってのけてしまう。

そんな人が自分の婚約者でこれほど頼もしいことはなかった。