招待客は既に藤堂家のダンスホールに集まっており、主役の登場を心待ちにしていた。
屋敷内にダンスホールがあるなんて驚きだが、藤堂家は単純に数だけ比較したら南城家の10倍ほどの資産を保有している。
伝統を重んじ年季の入った古屋敷に住まう南城家と、あらんばかりの富を屋敷に費やす藤堂家は正反対と言えるのかもしれない。
そんな両家の婚約パーティーは、隣接する洋式庭園を開放したガーデンパーティー形式で実施する。
ここのところが天気が良くなかったけれど、今日ばかりは晴れてよかった。
お天道様も私と伊織さんの結婚を祝福しているようだ。
青空の下、伊織さんに手を引かれ登場すると、どこからともなく拍手が沸き起こった。
舞台の中央に立ち、ドレスの裾を引いて一礼する。
婚約パーティーは藤堂家の御当主の挨拶に始まり、うちのパパへとバトンが渡されたのだが……これが大失敗だった。
(パパったら……)
空気を一切読まず私の生い立ちから恥ずかしい失敗談まで多種多様な話を織り交ぜつつ、最後には嫁に出す娘へのエールと涙で締めるパパの挨拶に私は赤面するしかなかった。
(あとで絶対文句言ってやるんだから……)
ゲラゲラと腹を抱えて笑っているお兄ちゃんをしばき倒すのも忘れずにおこう。



