「そう。お兄ちゃんにお願いしたの。伊織さんと結婚させてくれって」
「え、じゃあ伊織くんは何も知らずに月子さんと結婚するの?」
「そうなるわね」
事の次第をすべて聞き終わった、雫ちゃんは絶句していた。
「私……てっきり政略結婚っていうのは建前で二人は相思相愛だとばかり思っていたわ……」
……本当に相思相愛だったら良かったのに。
今の私には夢みたいな話だ。
「月子さんはそれでいいの?伊織くん、月子さんのこと何とも思ってないんでしょう?」
「いいの!!これから好きになってもらえばいいんだもん!!」
私は雫ちゃんの心配を強気で笑い飛ばした。
そりゃあ、欲を言えば相思相愛の状態で結婚するのが理想だけど、それよりも伊織さんが他の女と結婚を阻止する方が遥かに重要だ。
結婚という事実がなによりも大事。
「だから、協力してね?」
私は小首を傾げ、助けを求めるように雫ちゃんにウインクした。
伊織さんをメロメロにする作戦はまだ始まったばかりである。
作戦を成功に導くには雫ちゃんの活躍は必要不可欠だった。



