まあ、父さんが浮かれる気持ちも分からなくはない。
南城家と藤堂家では格が違う。
歴史も伝統も浅い藤堂家に対して、南城家は華族の家柄を継ぐ名家中の名家。
望外の縁談が振って湧いてでて、野心家の父さんが喜ばないはずがない。
少しくらい大目に見てあげてもいいだろう。
「それで、いつ結婚するんだ?」
「先方と相談して良き日を選びます」
結婚式の日取りは冬季緒をはじめとする関係各所と現在調整中である。
もちろん、早ければ、早い方が良い
いつ月子ちゃんの気が変わるか分からないから、こちらとしても気が気でない。
「ぐずぐずするなよ!!一刻も早く結婚しなさい!!」
「そうしたいのは山々ですが、仕事もありますから」
「仕事より結婚の方が大事だろう!!」
「一体誰のせいだとこうなったと思っているんですか?」
ニューヨークに送り出した挙句に、勝手な言い分で呼び戻した張本人がどの面下げて言っているのだ。
突然結婚しろと言われて、呼び戻されたせいで引継ぎもままならず、しばらくはニューヨークと日本の二重生活を送らなければならないのはどこの誰のせいだ。
至極真っ当な意見を述べると、あれほど威勢の良かった父さんが急にしどろもどろになった。



