それからはもう夢中だった。

伊織さんの目に留まるために、まず自分を磨きに磨いた。

勉強はいまいち苦手だったし、5歳も年下の私が伊織さんの周りにいる才色兼備の女性達に太刀打ちできる手段はこれしかないと思った。

高校を卒業すると同時にモデルにスカウトされたのもこちらとしては都合がよかった。

初めての出会いから10年。

他人の言動に惑わされて、泣き言を言うような自分はもういない。

モデルとしてのキャリアも積み、身も心も成熟した大人の女性になった私に死角はなかった。

私だってバカじゃない。

伊織さんが私を選んだのは、そこに愛があったからではないということを知っている。

それでも良いと望んだのは自分自身。

それでは嫌だと思うのも、また本心。

……だったら伊織さんの心を変えればいい。