藤堂グループを背負って立つという重圧をものともしない伊織さんは、いつも笑顔をたたえていて、伊織さんの周りは空気が優しかった。

空気清浄機のような伊織さんにいつからか居心地の良さと覚え、彼が家に来ると傍に居られる理由を探していた。

というのも、その頃の私は南城家という家名と、自分自身のアイデンティティに疑問を抱いて反抗期の真っ最中だったのだ。

今でこそ割り切って考えることが出来るようになったが、当時は真剣に悩んでいた。

どうして元華族の財閥の家柄というだけで、みな世間知らずの深窓の令嬢を想像するのかしら?

南城家の家名を背負っているだけで私の周りには寄ってたかって老若男女問わず様々な人がアリのように群がってきた。

そして、揃いも揃っておべっか使って取り入ろうとしたり、言うことを聞かせようとするのだ。

同年代の男性は特にひどかった。

将来の結婚相手と勝手に品定めしては、自分に都合が悪くなると低評価をつけるのだ。

何をしても南城家の家名がつきまとうことが嫌になって、似たような立場の伊織さんに聞いてみたことがある。