伊織さんにプロポーズされ。
婚約指輪をもらい。
婚約パーティーを開いて。
初めてのキスをした。
片思いの人がいるって勘違いしたり、婚約解消までして、今思えば盛りだくさんの8か月間だった。
でも、私にとってもはどれもかけがえのない日々だった。
「新婦様、準備が整いました」
「はい!!」
私は会場係の合図で立ち上がると、ドレスの生地を持ち上げしずしずと教会に向かった。
沢山の光が降り注ぐ教会の分厚い扉が開かれていく。
音楽隊が重厚なメロディーを奏で、コーラス隊が讃美歌を歌う中、バージンロードのその先には大好きな伊織さんが緊張した面持ちで待っている。
「病める時も健やかなる時も互いを愛することを誓いますか?」
神父が互いの婚姻の意思を確かめるように、宣誓を求める。
「誓います」
「誓います」
顔にかかるヴェールが伊織さんの手でめくり上げられると、私達は大勢の人が見守る中、誓いのキスをしたのだった。



