「準備はできた?月子ちゃん」

「ええ、バッチリよ」

花嫁の支度室に入ってきた伊織さんに、鏡越しに話しかけ後ろを振り返る。

特注のウェディングドレスは私達の門出に相応しい素晴らしい出来だった。

この日のためにトレーニングに勤しみ、エステに通い、美に磨きに磨きをかけた甲斐があるというもの。

「すごく綺麗だ」

「ふふ。ありがとう。伊織さんもとっても素敵よ……」

白のタキシードを着こなす伊織さんはおとぎ話に出てくる王子様のようだ。

うっかりそのままキスしてしまいそうになって、二人で顔を見合わせる。

入籍してから結婚式を挙げるまで一足早い蜜月とばかりに、何度もキスをしてきたけれど、今日ばかりは我慢しなくてはいけない。

やっと、私は伊織さんの奥さんになることができるのだ。

奥さんという響きにくすぐったさを感じたその時、支度部屋の扉がノックされた。