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「どうだ?見事な毛並みだろう?」

アスキムが誇らしげに胴を撫でると、二頭のラクダは嬉しそうにグエーと羊のように唸った。

「うおっ!!すげえあ!!」

お兄ちゃんは子供のように目をキラキラさせながら楽しそうにラクダの周りをウロチョロと走り回っていた。

この日、私はアスキムとお兄ちゃんと一緒に、ラクダが運ばれた牧場にやって来ていた。

藤堂家の屋敷から車で3時間もかかるこんな辺鄙な山奥に来ている場合ではないが、約束を反故にするとお兄ちゃんがうるさいから仕方なく付き合うことにしたのだった。

アスキムの愛駱駝だけあって人間には慣れているようで、二頭には新たな飼い主であるお兄ちゃんを怖がる様子はない。

それもそのはず。

お兄ちゃんは、二頭を破格の好待遇で迎えていた。

広い敷地を用意し、専用の飼育員に世話をさせ、栄養豊富な餌を毎日与えられたら不満を抱くこともないだろう。

よほど快適なのか、二頭は囲いの中でも悠々自適に暮らしているように見えた。