(だって初めてなんだもの!!)

伊織さんに抱かれるのはそりゃあ嬉しいけれど、本音を言えば、じっくり愛を囁かれて、緊張という名の衣を一枚一枚丁寧に解くようにして愛されたいのだ。

雫ちゃんはこの期に及んで怖気づいた私の言い分にすっかり呆れていた。

「もう正直に話してしまったらどうです?本当の気持ちを隠しているからややこしいことになっているのでしょう?伊織くんのことが好きって伝えてしまいましょう?」

雫ちゃんのアドバイスはアドバイスとはとても言えなかった。

伊織さんに本当のことを伝えるなんて、やけっぱちもいいところである。

伊織さんとの関係にひびが入っている今、それは自殺行為に等しい。

しかし、雫ちゃんに協力を仰いだ手前、頭ごなしに否定しづらい。

「考えとくわ……」

私はそうお茶を濁すと、涙でぐっしょり濡れたハンカチをポケットにしまったのだった。