伊織さんは銀座駅の程近くでタクシーを降りると、ファッションビルの入り口で女性と待ち合わせし、大通りから少し外れた場所にあったバーの中に揃って入っていった。

「うっそ……」

こっそり後をつけていた私は店の中まで追いかけようとして愕然とした。

入り口には無情にも“会員制”という看板が掲げられていたのだった。

もちろん、私は非会員である。

(ここまで来て門前払いなの!?)

私は悔しさのあまり地団駄を踏み、看板を蹴飛ばしそうになった。

店の中では伊織さんとあの女性がどんな情事を重ねているかわからないというのに!!

この期に及んで指をくわえて見てなければいけないの!?

……いや、こんな時こそ役に立つ男がいるではないか。

私は早速電話を掛けたのだった。

「もしもしお兄ちゃん!?大至急、銀座に来て!!」