「豪華景品を獲得したのは、新婦の御友人の南城様とその婚約者の藤堂様です」
私と伊織さんは新郎新婦から景品を受け渡してもらうため、壇上に上がることになった。
「南城様と藤堂様は婚約されたばかりとのことです」
司会者から私達の婚約が知らされると会場からは更なる拍手が巻き起こった。
多数の人に婚約を祝福されて悪い気はせず、私は壇上から愛想よく手を振っていた。
……しかし、本番はここからだった。
「景品と引き換えにおふたりには熱いキスを披露して頂きましょう!!」
司会者がそう告げると会場の盛り上がりは最高潮に達し、にわかに私と伊織さんに挙動に注目が集まった。
私は壇上にいるカレンにそっと目配せした。
司会者はカレンの指示通り見事にその役割をこなしてくれた。
キスを避けられない状況を作り出すことに成功したら、あとは私と伊織さんがキスをするだけだ。
理想のシチュエーションとは言えないが、そんなことには構ってはいられない。



