「伊織さんが挨拶もかねて新婚旅行は英国に行こうって言ってくれたので、母もお婆様もとても喜んでいました」
「まあ、それは良かったわね」
伊織さんってば、本当に優しいんだからー。
そんなところも大好き。
仁恵様はニコニコと幸せそうに笑う私を見て、安堵したようにほうっとため息をついた。
「伊織があなたを選んだ時は驚いたけれど、あの子と上手くやっていけそうで本当に良かったわ」
藤堂家の将来、そして伊織さんのことを実は一番案じていたのは、仁恵様なのかもしれない。
「伊織のことをよろしくね、月子さん」
「はい」
仁恵様から伊織さんのことを頼まれた私は元気よく返事をした。
心配していた嫁姑問題は、何の問題もなさそうだ。
だが、肝心な伊織さんとの関係には進展がない。
ひとつ屋根の下で暮らす以上、今後の展開に望みを託してみてもよいが、そろそろ次の一手を考えなければいけないようだ。



