「ありがとうございます」

雫ちゃんから仁恵様は礼儀に厳しい人で、気に食わないことがあると相手が誰であろうとピシャリと叱責すると聞いていたが、私に対してはそれほど厳しさが感じられなかった。

手前味噌だが、私が藤堂家の嫁としては文句なしの出来栄えだからかもしれない。

これまで華道の他に、茶道、着付けなどの手ほどきを受けたが、いずれも初日から合格点をもらっていた。

「うちの母がハーフなので日本の和文化に対しては並々ならぬ思い入れがあって、私も子供のころから一通り習っていたんです」

「あら、そうだったの」

日本オタクのママに当時は嫌々習わされていたが、今となっては感謝しかない。

まさか大人になってから、こんな風に役に立つなんて!!

「お母様は元気かしら?」

「はい。お婆様に付き添って英国にいるので婚約パーティーに来られませんでしたが、結婚式には都合をつけて戻ってくると言っていました」

英国郊外の領主館で独り暮らしのお婆様は齢70を超えた頃から足腰が弱って車椅子が手放せなくなった。

そんなお婆様を心配したママは、日本を離れ領主館で一緒に暮らしているのだ。