(キス……される……?)

私は甘い展開に胸をときめかせながらひたすらキスを待っていたが……一向に唇が重なる気配がしない。

何かおかしいぞと気が付いた時には、カチリと無機質な音がして辺りが闇に包まれた。

伊織さんが私を跨ぐようにして、サイドテーブルのランプを消したのだった。

「おやすみ」

伊織さんは先ほどの艶めいたムードから一転し、無情にも私の方を見向きもせずそのままベッドに横になった。

(……え?)

これからめくるめく一夜が待っているのだと思っていた私は、頭を銃で射抜かれたような激しい衝撃を受けた。

(ええー!?)

も、もしかして!!私の勘違い!?

一緒に寝るって絶対そういうことだと思ってたんだけど、違うの!?

ただ普通に寝るだけ?

両家公認の仲なんだから、ちょっとくらい手を出してくれてもいいのに!!

イチャイチャしましょうよ、伊織さーん!!

しかし、頭の中でいくら駄々をこねてみても、伊織さんがこちらを向く気配はしない。

それどころか、小さく寝息が聞こえてくるではないか。