私はずっと母にとって重荷だと思っていた。

だから、一人暮らしを希望したんだ。

私が出ていくと母はこの家に1人になる。


でも…
母には彼氏がいるから、私に遠慮なく一緒に暮らす事ができる。


そういう意味でも私は一人暮らしを希望した。


――――――――――

もうすっかり通い慣れた不動産屋へと向かう。


住む所はもう決めていた。


実家…からさほど離れていない場所。


駅3つ分しか変わらない距離。


そしてそれは私と母の距離。


すっかり仲良くなった担当のお姉さんと準備を進めた。


家に帰ると荷造りしなきゃ

帰り道ほんの少し足早だ。

「あっおかえり。」


すっかり夜の世界モードの母がタクシーを呼んでいる所だった。


「住む所、決まったよ」

母は少し俯き加減で

「よかったね」

と微笑んだ。

「じゃあ、行くから後よろしくね」


母はタクシーに乗り込み、ヒラヒラと手を降った。


「もう仕事、やめてもいいんじゃない?」

玄関からタクシーに乗り込んだ母に私は叫んだ。


母の表情は見えなかった。