君は僕のもの 【続】





よくもこう…何一つ表情に出すことなく、こんなことができるな。

とつくづく思ったりする。


だって翔太くんとか…英二先輩とか、
…つまり簡単に言えば男の子って考えてることがすぐに顔に出るじゃない?


というか簡単に簡単に言っちゃえば、翔太くん??



失礼かもしれない、けど。


なのに樹は全くそういう感情を顔に出さない。

ニヤニヤ?ニタニタ?

まぁ、そういう感じの…ちょっと変態っぽい、って何言ってんだろ。



あたしがよく見る樹の表情は、無表情それか…不機嫌そうな顔。
あ!たまに笑顔もある…けど。


…何か考えてみれば、

若干問題有りかもしれない、なんて思ってみたりするけど。



何よりあたしにだけに時折向けてくれる優しい笑顔は、
彼女…っていうよりもあたしだけの特権って感じだから素直に嬉しい。



「…外は寒いからな」


『ねぇ、愛梨』と言われて聞き返せば、
少しボーッと何かを考えてそんなことを言い出すから、

やっぱり樹の頭の中はよく分からない。



「だってもう11月だよ?寒いっ!…ていうかもうほとんど冬って感じがする」

確かに寒い。なんて思いながらそう言ってカーディガンの袖に手を引っ込める。


「冬は嫌だ」

「あたしも好きじゃないな…」


冬が好きな人なんているのかな?

あ、でも冬が好きでも寒いのが嫌な人はいるのかもしれない…



すると樹は何故かあたしの指に自分の指を絡め、
そのあたしの指をジーッと見つめると、優しくキスをした。



「…っ?」

あたしの考えてというか気持ちが分かったのか…


「何となく」

と柔らかく樹は笑って言ってみせる。



何か変なの。

いつもと何だかどこか違う樹に疑問を感じつつも、


そのまま昼休みを終えた。



そして、

この日から。樹の“浮気疑惑”が浮上するわけで。


あたしの苦悩の約一ヶ月が幕を上げたのだった。