「おめでとうって…皆は言ってくれたもん!」
立ち上がった姿勢のまま樹を見下ろしてそう言うあたしの声は少しばかり大きい。
いや、こんなことで怒っちゃダメだ愛梨…
そう思うんだけど、やっぱりあたしの眉は釣り上がったままみたい。
「じゃぁ、『おめでとう』」
ぼ…棒読み。
しかも『じゃぁ』って?何それ、何なのそれ!?
「おーい、樹ももう少し考えてあげればいいのに」
あたしと樹を交互に見ながら翔太くんは言うと、定食のお味噌汁を啜った。
……うぅ…っ…!
ギュゥッと握りしめた拳にみるみる力が込められていく。
だんだんだんだん頭に血がのぼって…
「あ、…怒っちゃったみたいだよ」
それを美菜も面白そうに言う。
「もういい、もういいよ!!」
少し大きめに出た声に食堂にいた周りの人達が振り返ったり、ザワついたり。
けどあたしの興奮は収まりきらずにどんどん上昇していくらしく。
「いい、帰る。知らない!!
…そうですね、そうですよ。樹の馬鹿っ!ばーか!!!」
ベーっと舌を出してキッと樹を睨みつけてからあたしは一人でテクテク…って言うよりはドスドス腕をぶんぶん振りながら歩いて行った。
目的地は無いけど。

