「…しょ、翔太くん…?」
屋上のドアを開いて外に足を踏み出してから、小さく呟いた。
だけど…。
……シーン…。
え!
誰も居ないの…?
そのまま歩を進めてフェンスの方に向かう。
周りを見渡してみても人の気配も無いし、もしかしたらハズレ…なのかな?
きっとこういう時、樹の勘ってやつはピンポイントに場所を探り当てるからなぁ…ていうか推理的?なのが凄いし。
「やっぱり樹が行った方が良かったのかなぁ…」
ポツリと呟いたその時。
グイッ!!
「っああぁ?!」
後ろから思いっきり引っ張られたと思ったら、樹とは対照的な少しキツい甘過ぎる香り。
すると急に視界が真っ暗になった。
…っ!?
「“愛ちゃん”」
その声を聴いて思わずビクッとして振り向くと、
「翔太くん!?!?
…い、居たのッ?」
「居たのって酷いこと言うねぇ~」
と言って笑った翔太くんはいつも通りで。
何だかそれが逆に変な違和感を感じさせるような気もした。

