こ、これは…もしや“助け船”とやらなの?
ポカンと口を開いたまま、美菜をボーっと見て。それから樹の方を見る。
「そうなの?」
美菜には全く目もくれず。
少しだけ疑う姿勢は崩さずにあたしの顔を覗きこむようにして言った。
「…えっとぉ、」
口籠るあたしをまたまた不審な目で。
こ、困るよ…
あたしそこまで演技派じゃないよぉ。
「そう!そうそうっ!!!」
そんなあたしの言葉全てを揉消すように、若干大きな声で美菜が言うと、それを見て樹が眉を顰めた。
「アンタに聞いてないんだけど」
と、冷たく言い放つ。
マズいよ…マズいよぉ!!
「……資料室の掃除、た、頼まれた…?」
「…ふぅん」
語尾が疑問系になっちゃったような、気もするけど…
「うんうん!だから美菜がお手伝いすんのー!
お互いガールズトークもしたいし、丁度良いじゃん?だから今日は王子、先に帰っていーよーん!」
……。
凍った空気が漂いつつも、ニコニコしたままの美菜が凄くこの場に不釣り合い。…な気もする。
「じゃぁ、さよなら」
手をヒラヒラさせながら樹はそう呟くと、そのまま背を向けて出て行ってしまった。
怒ってた?
いや…怒ってはいなかった、かなぁ?
けど、あぁいう時の樹は少しだけ性質が悪いんだけど……
「はぁ…」
緊迫した空気から逃れた溜め息か、それとも不安の溜め息かは分からないけど口から零れて消えた。

