「桐島さん、ばいばーい」

「…あ、うん。また明日ね」


とうとう時間は例の“放課後”になってしまった…。


さっきから数百回に亘って右から左に『どうしよう』って言葉が流れて止まらないよ。

それと同じように目が泳いでる、愛梨。


「……ねぇ」

ビクビク…ッ!っと背中が震えて目をパチパチさせる。


「あのさぁ、帰んないの?」

苛々してるというか、どちらかと言うと…さっきから挙動不審なあたしに対して疑いのような目で見てるみたいで。

ちょっとだけ心拍数が上がる。


「ちょっと…今日は、その……」

ヘタクソ~っ!!!

心の中の悪魔が『もっと上手く嘘付けない訳~?』と心の中の天使に言い捨てる。


ヒ、ヒドイ……


「何か用事?」

側にあった机にトンッと腰を下ろして普通に聞いてくる。


普通に、普通に。



「用事っていうか……」

心の中の天使が『嘘は駄目!ちゃんと樹に話すべきだよ!!』と言う。


…そんなこと言ったって~~!!!

心の中の自分が暗闇の中でスポットライトを浴びながら、頭を抱えて蹲る。


困ったぞ…


「あぁーー!!
愛梨っ!…今日は美菜の手伝いしてくれるって言ったじゃーん!!!」

「え…?」


急にあたしの首にまとわりつくのは……美菜の腕。