…樹side




来るつもりはなかったんだけど……


やっぱりいくらムカついてるとは言っても、愛梨がどうなってもいいかと言うと、そうでもない。

いや、むしろそれは困る。


「お前に…っ、何が分かんだよ!?!?」

勢い良く飛び付いて来たかと思えば、俺の胸倉に掴みかかるとそのまま一気に壁まで攻められる。


勢い良く当たった背中が、痛い。


「…分かる訳ないでしょ、アンタじゃないんだから。」


ニヤッと笑ってそう言う。

けどそれに苛立ちを覚えたのかその手に籠められた力が大きくなって、俺の首を絞める様にする。


さすがに…死にたくないけど。


「俺はなぁーっ!?…テメェみたいに、ヘラヘラしてる男が…一番嫌いなんだよッ!!!」


「別に好かれたくなんか無いけど」

煽る様に言った瞬間。


白井の眉間の皺が深くなって、眉が一気に釣り上がる。



そして…


「…っ?!」

「樹ッ!!!!」


鈍い音と共に口元に当たった、硬くゴツゴツした、…拳。



「ちょっ…!!樹に何するの!?!?」

若干、興奮気味に愛梨が近付くけど。


「…大人しくしてて、」

それを俺は制する。