…樹side




「ねぇ、いつまでふててるの?」

俺の部屋のベッドの上で枕をギュッと抱き締めながら、愛梨は不貞腐れた表情を絶やさない。

原因は今日の“あの話”だと思う。


「…別にそんなこと無いもん」

そう言う愛梨の視線はなかなか俺に合わないし。


不機嫌な時、決まって愛梨は口先を少し尖がらせたりする癖があるから、…これは120%の確率でそうだ。


「それより、何で?」

愛梨が不貞腐れるのも不機嫌になるのも、考えれば原因は全部“アイツ”なわけだし。


だからか少しだけ、
少しだけだけど…妙に少しの苛立ちを感じる訳だ。

「…なん、で?」

急な俺の質問に対して軽く目を見開くと、不思議そうな顔をして俺を見た。


大体、考えれば普通じゃないでしょ?


今まであぁゆうことされて、それで昔に何があったか知らないけど…そんなの今更どうにもならないし、

赤の他人がどうすることでもない。


「何でそんなに気に掛けるの?」

椅子に座ったままチラッと視線を合わせて言う。


最近ずっと読んでる小説にしおりを挟んで机の上に置くと、癖なのか足を組んでしまう。


「それは…」

言葉に詰まる愛梨を見て、やっぱり胸の中に引っ掛かってた嫌な感じに気が付くと、その原因が何よりも確かな…


“白井暁”


という一人の人物で。


妙に心がざわついて、もしかして…とか。

嫌なことを考える。