駄目な奴。と言っても…
分かりやすい奴って言った方が解りやすいかもね。
「ち、違うんだよ…?
その…何というか、英二先輩優しいから…っ」
で。
いつもすぐ『違う』とか『その…』とか曖昧に言って言い訳をするのも悪い癖。
でもそれよりも俺が苛っときたのは、
『英二先輩は優しいから…』というその言葉だけ。
何それって感じじゃない?
「優しいから…何なの?」
相変わらず刺々しい言い方しか出来ない自分も、少しは餓鬼だなって思うけど…仕方ない、まだ15なんだから。
「相談…乗ってもらおうかと思ってて、樹のこと」
ホラね、やっぱりそういうオチ。
結局のところ、俺がコイツに秘密を持っても…コイツは俺に秘密なんて持てない。つーか持たせないっていう感じもするけど…
大体は分かっちゃうんだよね…愛梨の考えてることも、全部。
この俺が何年間も片想いなんて辛気臭いことやってたんだから…分からない方がおかしい。
「俺には何も言わなかったのに…アイツには話すの?許しちゃうの…?気持ち」
「違うよ…っ」
泣いてる泣いてる。
分かってる、本当は俺に聞きたくても聞けなかった事。知りたくても俺がはぐらかしたんだから当たり前だよ。
別に愛梨を泣かせたかったわけじゃ無いけど…
何かアイツに心を許されても困るしムカつくから、ここは少し泣かせてみた。
「俺ってそんな信用ない?」
俺よりも低い背の愛梨を見下ろしたまま顔を覗く素振りを見せて言う。
「…そんなこと、無い。けど…」
けど?
「話したくないって…あたしにはっ、だから樹は隠し事してる…っ」
話しの内容がめちゃくちゃ。
でも言いたいことは分かる。…気がする。