君は僕のもの 【続】





…き、気まずい。

言葉にしたくても何も出てこないし、だからと言ってどこに向けていいのかも分からない自分の視線の先が…妙にもどかしい。


“こういうとき”の樹はいつもの何倍も怖い。

ていうか本当に…怖い。



「メールまでしてるんだ?」

「…いや、……その」

「何か約束でもしたの?」

「……っ」


表情はそのままで淡々と感情を剥き出しにはせずにそう言う樹は、尚更あたしには怖い…というよりも、難しいけど怖い。


これは誤解をされてしまった。

…けど弁解のしようがないしどうしようもない、そもそも樹のことで相談があったなんて口が裂けても裂けなくても言えるようなことではない。ていうか言えない。


「ふぅん」


「違うんだよ…?樹が最近、変だから…」


言えないとかいいつつも、やっぱり変な誤解をされるのが嫌で。

その一心で何故か「いいわけ」というものをしてしまう、ちょっとズルイかな?あたし…
とか思いながらも。樹に嫌われるよりはマシだという判断になった。


「変?」

苛っとした感じで樹は言う。


「一緒に帰ってくれないし…!
何もあたしに話してくれないじゃないっ!!」


「話したくないから話さないだけだけど」

当り前のことを言っているかのように樹はそう言うと、そのまま一人で階段を昇り始めてしまった。



何か酷いな。

本当にあたし何かしたかな?


したならちゃんと謝るよ?

…けど、
何もしてないもん。


急にあんなになちゃったんだよ?



…何もしてないのに。