桜の城のノクターン


「…聞いてました??」


訝りながら聞くと、


「もちろんちゃんと聞いてましたよ~?こう見えても、一度に何人分もの話を聞き分けることが出来るんですよ~。だから、大丈夫ですよ~、ご心配なく~」


なんだか癪に障る言い方だが、本当にできていそうで怖い。


「エスメラルダ嬢も終わったようですねぇ~。お二人はこれからどうしますかぁ~?私は私用で店を空けなければいけないのですが~」


資料を見終わったにもかかわらず、エスメラルダはボーっと遠くを見つめていた。




「…どうしましょう…?リズ様にはここにいると伝えてしまったし…」



「あ、それなら大丈夫ですよぉ~私からリズ君に伝えておきます~。大体の場所さえ分かればいいので決まったら教えてくださいねぇ~」



そう言って紹介屋は立ち去ろうとする。


行く場所が決まっても、誰に伝言すればよいのか全く分からない。


連絡手段が無いからこそ、困っているというのに…