よく見れば、床は鏡のように磨き抜かれている。
ここは、藤盛の少将の邸。
つい先ほど、牛車の貴族が顔をしかめた噂の邸である。
「花菜? 花菜姫や?」
声は屋敷の北の対の一間から聞こえてくる。
邸に入った男は、御簾の影から様子を伺った。
これまたボロではあるが敷かれている畳の上に、姫が横たわっている。
東雲の空から差し込みはじめた微かな光を浴びる彼女の頬は桃色に染まり、あどけなさが残る額は艶々として健康そうである。
瞼は閉じたままだが、長い睫毛の下で目が動いているようだ。
夢でも見ているのだろうか。
ぷっくりとした可愛らしい唇が、モゴモゴと動いた。
ここは、藤盛の少将の邸。
つい先ほど、牛車の貴族が顔をしかめた噂の邸である。
「花菜? 花菜姫や?」
声は屋敷の北の対の一間から聞こえてくる。
邸に入った男は、御簾の影から様子を伺った。
これまたボロではあるが敷かれている畳の上に、姫が横たわっている。
東雲の空から差し込みはじめた微かな光を浴びる彼女の頬は桃色に染まり、あどけなさが残る額は艶々として健康そうである。
瞼は閉じたままだが、長い睫毛の下で目が動いているようだ。
夢でも見ているのだろうか。
ぷっくりとした可愛らしい唇が、モゴモゴと動いた。



